「会社を辞めたい。でも、次の仕事がすぐに決まらなかったらどうしよう」
定年前後になると、退職を考えるときに仕事のことだけではなく、その間の生活費も気になってきます。
私自身も会社を辞めた経験がありますが、いざ退職となると、健康保険や年金、税金など、それまで会社に任せていたことを急に自分で考えなくてはなりません。
その中のひとつが、いわゆる「失業手当」です。
「自己都合で辞めたら、失業手当はもらえないのでは?」
そう思っている方もいるかもしれません。
結論からいうと、自己都合退職でも、条件を満たしていれば失業手当を受け取ることができます。
しかも制度は以前から変わっています。
2025年4月以降に自己都合で退職した場合、7日間の待期期間のあとに設けられる給付制限は、原則として1か月になりました。以前の「2か月待つ」という情報は、現在では古くなっています。
この記事では、2026年9月時点の制度をもとに、自己都合で会社を辞めた場合の失業手当について、定年前後の方にもわかりやすく整理してみます。
※雇用保険では一般に「失業手当」と呼ばれているものを「基本手当」と呼びます。この記事では、わかりやすさを優先して主に「失業手当」と表記します。
自己都合退職でも失業手当は受け取れる
まず知っておきたいのは、失業手当は「会社を辞めた人なら誰でも受け取れるお金」ではないということです。
自己都合退職の場合、原則として離職前2年間に雇用保険の被保険者だった期間が通算12か月以上必要です。
さらに、
- 働く意思がある
- すぐに働ける状態にある
- 仕事を探している
- それでも就職できていない
という「失業の状態」であることが必要です。
ここは、定年前後の方には意外と大事なところです。
たとえば、
「会社を辞めたら半年くらい何もせずのんびりしよう」
「もう働くつもりはなく、そのまま年金生活に入ろう」
という場合は、そもそも失業手当が想定している状態とは違います。
失業手当は、退職した人へのご褒美ではなく、次の仕事を探す間の生活を支えるための制度だからです。
自己都合退職では、いつから失業手当をもらえる?

自己都合退職の場合、大まかな流れは次のようになります。
退職
↓
ハローワークで求職申込み・受給手続き
↓
7日間の待期
↓
原則1か月の給付制限
↓
失業認定
↓
失業手当の支給
以前は、自己都合退職の場合、7日間の待期が終わったあと原則2か月の給付制限がありました。
しかし、2025年4月1日以降の退職では、給付制限が原則1か月に短縮されています。
ただし、
「退職して1か月と7日たったら、その日に銀行口座へ振り込まれる」
という意味ではありません。
実際には受給資格の決定、説明会、求職活動、失業認定などの手続きがあります。原則4週間に1度の失業認定を経て支給されるため、実際の振込時期は手続きの日程によって変わります。 ハローワーク
ですから、退職後の生活費を考えるときは、
「辞めた翌月からすぐ失業手当が入るわけではない」
と考えて、ある程度の生活資金を準備しておくほうが安心です。
自己都合なら必ず1か月とは限らない
現在の原則は1か月ですが、すべての人が同じではありません。
退職日からさかのぼって5年間に、正当な理由のない自己都合退職による受給資格決定が2回以上ある場合、給付制限は3か月になります。
また、自分の責任による重大な理由で解雇された場合にも3か月の給付制限があります。
反対に、給付制限がなくなるケースもあります。
2025年4月からは、一定の教育訓練を受ける場合、自己都合退職でも給付制限が解除される制度が始まっています。対象になるのは教育訓練給付の対象講座や公共職業訓練など、一定の条件を満たす訓練です。
これは人生後半の学び直しを考えている人にとって、なかなか興味深い変更だと思います。
会社を辞めたあと、
「せっかくだから新しい資格を取ろう」
「今までとは違う仕事に挑戦したい」
と考える人もいるでしょう。
仕事を探す期間を、ただ待つ時間にするのではなく、新しいことを学ぶ期間として使えるわけです。
失業手当はいくらくらい、何日もらえる?
当然ですが、ここも気になります。
失業手当の1日あたりの金額は、退職前6か月間に支払われた賃金などをもとに計算されます。
全員が同じ金額をもらえるわけではありません。
また年齢によって上限額があります。
2026年8月1日現在、基本手当日額の上限は、
45歳以上60歳未満が9,110円、
60歳以上65歳未満が7,830円です。
最低額は2,562円となっています。これらの金額は毎年見直されるため、実際に退職するときは最新額を確認してください。 厚生労働省
では、何日分もらえるのでしょうか。
一般的な自己都合退職の場合、雇用保険に加入していた期間によって、
10年未満:90日
10年以上20年未満:120日
20年以上:150日
が基本となります。 ハローワーク
長く会社員をしてきた50代・60代の方なら、雇用保険の加入期間が20年以上というケースも珍しくないでしょう。
だからこそ退職を考え始めた段階で、「自分はいくら、何日くらい対象になるのか」を一度確認しておく価値があります。
60代は「65歳」がひとつの境目になる
このサイトを読んでくださる方には、60代の方もいらっしゃると思います。
そこで知っておきたいのが65歳という境目です。
65歳未満で離職した場合は、条件を満たせば通常の基本手当の対象になります。
一方、65歳以上で離職した場合には、通常の基本手当ではなく、高年齢求職者給付金という一時金の仕組みになります。
高年齢求職者給付金は、雇用保険の被保険者だった期間が1年未満なら基本手当日額の30日分、1年以上なら50日分に相当する額が一括で支給されます。もちろん、65歳以上でも求職の意思や能力があることなどの条件があります。 都道府県労働局所在地一覧
つまり、
「64歳で辞める場合」と「65歳になってから辞める場合」では、雇用保険の受け取り方が同じではありません。
定年や再雇用の終了時期を考えている方なら、一度確認しておきたいポイントです。
60代前半なら年金との関係にも注意
もうひとつ、定年前後ならではの注意点があります。
年金です。
65歳になるまでに雇用保険の基本手当を受給する場合、老齢厚生年金や退職共済年金との間で併給調整が行われます。
基本手当を受けている間は、対象となる老齢厚生年金などの支給が停止される仕組みです。
「年金も失業手当も両方そのままもらえるだろう」
と思って生活設計をすると、予定が狂ってしまう可能性があります。
60代で退職する方は、失業手当だけを見るのではなく、年金と合わせて考えることが大切です。
退職後すぐ働けない場合はどうする?
50代、60代になると、退職の事情も人それぞれです。
自分は元気でも、親の介護が必要になることもあります。
病気やけがで、しばらく働けないこともあるでしょう。
こうした場合、失業手当は「すぐ働ける人」のための制度なので、そのまま受け取れないことがあります。
ただし、病気やけが、出産、育児などで30日以上働けない場合には、受給期間を延長できる制度があります。
基本手当の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間ですが、一定の場合には働けない期間を加えることができ、最大3年間延長できます。
事情があるからといって、
「自分は対象外なんだ」
と決めつけないほうがいいでしょう。
わからない場合は、早めにハローワークで聞いてみるのが確実です。
独立やフリーランスを考えている人にも新しい制度がある
会社を辞めたあと、再就職ではなく、
「自分で仕事を始めたい」
と考えている方もいると思います。
実は、ここにも以前とは違う制度があります。
2022年7月から、離職後に事業を開始した人や、事業の準備に専念し始めた人について、事業を行っている期間を失業手当の受給期間に算入しない特例が設けられています。
本来の受給期間1年に加え、最大3年間、事業を行っていた期間を受給期間に算入しない扱いを申請できます。申請期限などがありますので、独立を考えている場合はハローワークへの確認が必要です。
以前このサイトでは「フリーランスと再就職手当」についての記事も書いていました。
ただ、制度も変わっています。
これからは昔の情報をそのまま使うのではなく、現在の制度を確認しながら、「再就職するのか」「独立するのか」を考えていく必要がありそうです。
退職が決まったら、まず離職票を確認する
会社を辞めたあとは、住んでいる地域を管轄するハローワークで求職申込みを行い、離職票を提出して受給資格の手続きをします。
主に必要になるものは、離職票、マイナンバーを確認できるもの、本人確認書類、本人名義の預金通帳またはキャッシュカードなどです。写真が必要になる場合もありますが、マイナンバーカードの提示によって省略できる場合があります。 ハローワーク
そして、もうひとつ確認しておきたいのが離職理由です。
離職理由によって給付制限や給付日数が変わることがあります。
「会社から辞めるよう勧められたのに、離職票では自己都合になっている」
など、実際の退職理由と記載内容が違う場合は、そのままにせずハローワークへ相談できます。ハローワークが事実関係を調べたうえで離職理由を判定します。 ハローワーク
会社から届いた書類は、よくわからないまましまい込まず、一度中身を確認しておきましょう。
失業手当は「次を考える時間」を支えてくれる制度
若いころの転職なら、
「辞めたらすぐ次の会社へ」
という考え方もあったかもしれません。
でも人生後半になると、少し事情が変わります。
再雇用を選ぶのか。
別の会社で働くのか。
勤務日数を減らすのか。
資格を取るのか。
副業を始めるのか。
思い切って独立してみるのか。
あるいは、収入だけではなく、これからどんな暮らしをしたいのか。
選択肢はいろいろあります。
失業手当は、ただ「会社を辞めたらもらえるお金」と考えるよりも、次の生き方を考えながら仕事を探す期間を支えてくれる制度と考えたほうが、人生後半にはしっくりくる気がします。
慌てて次を決めなくてもいい。
ただし、制度を知らずに動いてしまうのは、もったいない。
まず自分が使える制度を知る。
そのうえで、これからどう働くのかを考える。
それも「人生後半、ワンモーチャンス」のひとつではないでしょうか。
まとめ 自己都合で辞めても、まず制度を確認してみよう
自己都合で会社を辞めても、条件を満たしていれば失業手当を受け取ることができます。
2026年現在、自己都合退職の場合は7日間の待期後、給付制限は原則1か月です。
また、教育訓練を受ける場合の給付制限解除、65歳以上の高年齢求職者給付金、独立・開業した場合の受給期間特例など、以前とは制度も変わっています。
とくに50代から60代は、
「失業手当だけ」
「年金だけ」
「退職金だけ」
と別々に考えるのではなく、これらを一緒に考えたほうがこれからの生活をイメージしやすくなります。
会社を辞めることは、人生のかなり大きな節目です。
でも、退職は終わりではありません。
制度をうまく利用しながら少し立ち止まって、これからどう働き、どう暮らしていきたいのかを考える。
そんな時間があってもいいと思います。
※この記事は2026年9月時点の制度をもとに作成しています。個別の受給資格や離職理由の判定、具体的な支給額については、お住まいの地域を管轄するハローワークでご確認ください。
